20230312 シリコンバレー銀行破綻について

シリコンバレー銀行の運用額は約2,000億ドル（約28兆円）、全米で16位の銀行です。リーマンブラザーズが6,000億ドルでしたから規模は3分の１ですね。マスコミがリーマン以来最大のとかいうと同規模と勘違いしてしまいそうです。

名前から分かるとおりシリコンバレーを中心に活躍している銀行で創業は1983年です。主にスタートアップ企業（日本でいうところのベンチャー企業、この表現は海外じゃ通じないです）への投資がメインでした。

これはある意味合ってるのですが、なんで？って思いませんか？

そもそもIT企業に貸してれば良いのですが、最近GAFAもレイオフ（解雇）を発表するなどその規模を縮小し始めています。つまり、前にも言及した通り、ITの時代はひと段落し、ある程度簡単に開発できるとこは需要を掘り尽くしてしまったのです。この分野は次のAI技術（人工知能）の時代まで少し待つ必要があります。

となるとどうなるか、貸出先はないし、企業は投資しないので銀行に現金が集まってきます。

銀行はお金が集まると嬉しいと思うかも知れませんが、預金は銀行にとっては借金なのです。

ここで銀行はどうするか？国債や債権で運用せざるを得なくなります。主に米国債やMBSで運用していたようです。MBSについては別の機会でお話ししようと思いますが、リーマンショックの元凶となったモーゲージ債です。簡単にいうとみんなのローンを集めて一つの商品にしてから切り分けて販売する方法です。ですので不良債権を混ぜてしまう事もできるんですね。リーマンショック後これはかなり厳しくなりました。しかし、アメリカの不動産、特にシリコンバレーのあるカルフォルニアはバブルに近い状態になっていると思います。IT企業の撤退によってこの地域の不動産価格は大幅に下がる事でしょう。

今回はそれが原因ではないので話を元に戻します。

これがあまり理解できない人が多いと思います。ですので例を示したいと思います。

あなたは2年後に110万円になる債権を100万円で買ったとします。

1年後にどうしても現金化する必要がありました普通に考えると105万円の価値がありそうですよね。

ところが次の年2年後に140万円になる債権が100万円で売られたとします（これが利上げです）

この条件ならいくらで買いますか？

ちょっとややこしいのでもう一年後を想像してみます。最初の債権は110万円で払い戻されます。しかし２つ目の債権は120万円の価値があります。つまり10万円の損になるというわけです。

つまり満期まで持っていれば損が出なかった2年後に110万円になる債権を100万円の1年後の価値は105万円ではなくここから10万円を引いた95万円となるわけです。すごく不思議ですよね。じゃあ売らなければ良いって話ですが、今回シリコンバレー銀行の経営状況が良くないということで大量に現金が引き出されました。現金が足りなくなれば損を覚悟で売らなければいけないのです。これが利上げと債権市場に起きる逆相関です。

今回の件でIT企業の不振と銀行業績という問題が、利上げに置き変わりました。ですのでFRB（アメリカの中央銀行）も利上げのペースを落とさざるを得ないでしょう。利下げ観測から短期では株が上がる可能性すらあります。

しかし、FRBが利上げペースを落とさない可能性も0ではありませんし、シリコンバレー銀行の影響範囲もまだ全容が見えてません。この辺は注視していく必要があります。今回はそれほど影響はないかも知れませんが、リーマンショック前のパリバショック的な位置付けにならないかと危惧しています。

問題の本質はIT企業の業績不振であり、銀行業の全体の貸出先不足問題にあります。加えて、IT業界の不振は不動産価格の下落を招き、MBSなどにも影響が出てくるでしょう。先日お話ししましたが、いわゆるコロナ貯金がなくなるのが今年の夏頃なのでその影響が出てくるのが今年の年末くらいじゃないかと思ってます。

今回の件ですぐにどうこうということではないですが、氷山の一角が見え始めたという感じです。
話は変わりますが、今イスラエルとイランが一触即発の状態です。イランは我々日本人の祖先の一部が住んでいたところですし、イスラエルについても然りです（さらにウクライナもそうなんですけどその辺は長くなるので別の機会に）。何としてでも止めないと核戦争に発展する可能性もあり、かなり危険です。誰かに利用されないと良いと思います。

それではまた動きがあったら報告します。